Yさんと漢字
- 荒牧 直子

- 9月7日
- 読了時間: 3分
更新日:9月9日
小学1年生時に入塾したYさんが3年生の頃、保護者様からご相談がありました。
漢字がおぼえられないようで、漢字テストの成績も芳しくない。
当塾とは別に、漢字学習のため大手の学習塾に通わせはじめたのですが。と。
確かに心配になりますよね。
漢字の得手不得手には、個人差があります。
中にはカメラアイを持っていて、
一度見た漢字がすぐ書ける子がいれば、
高学年でもまだ鏡文字が抜けない子もいます。
これは努力の有無ではなく
その子の生まれ持った特性ですので、
長い目で見てあげることが大切です。
漢字という狭い範疇で、
国語に自信をなくしたり嫌いになったりする事だけは避けたいものです。
さて、Yさんに話を戻しましょう。
彼は何より洞察力、創造力が豊かで、私はその強みを最大限伸ばしたいと考えていました。
例えば、「三日月」を
「かいじゅうが かじって残したみたい」と表現するような素晴らしさでしたから。
一方、漢字については、
「先生、今日見た漢字の中で一番画数が多いのどれだと思う?」と当て合ったり
「漢字しりとり」というカリキュラムに辞典首っ引きで夢中になったり
と、意欲的に興味を持って学習していました。
保護者様には以上のことをお話し、
Yさんが喜んで漢字のための学習塾に
通っているならともかく、
そうでないならば
辞めさせて欲しいとお願いしました。
納得くださった保護者様は
漢字のための学習塾を退会させ、
長い目で見ていただくことに。
ある時保護者様が、朗らかな声で
「先生、学力テストの漢字0点でした!でも読解は満点だったんですよ~!!」と報告をくださり、読解満点はYさんなら当然のこと、保護者様もおおらかに見守ってくださっているのだと安心したものです。
そんな彼が6年生になり
「漢字をたくさん使って文章を書こう」というカリキュラムで作った文章をご紹介します。
このカリキュラムは、高学年なら
「警視庁から鳥の卵を頂いた」
のように、1~2行程度の文中に今まで習った漢字をなるべくたくさん使うというものです。
※当塾では学年に関係なく、本人が書きたいと言えば中学や高校で習う漢字でも教えます。
✨✨✨✨✨✨
尊敬しているお婆さんが死亡した。
天皇である彼女は、お誕生日だったので特別に聖火台で火をつけさせてもらった。
でもその時、胸が高鳴っていたので足の骨が片一方折れているのを忘れていた。
車椅子で行ったけれど、一人にして欲しいと言い
立ち上がってしまったために倒れて体に火がついて死亡した。
(漢字44使用)
問.この文章の中で最も画数の多い漢字はどれでしょう。
✨✨✨✨✨✨
女性天皇の登場や、
「胸が高鳴って」という美しい表現、
また、「死亡」理由の意外性が上手いなぁと思います。
おまけに彼が好きな画数の問題付き。
これも彼のアイディアです。
保護者様のおかげで、
彼はいつも漢字が大好きでしたし、
持ち前の洞察力と創造力を発揮して、
ますます豊かな表現をするように
なっていきました。
今では彼は立派な中学生です。
以下は本記事掲載を承諾くださった保護者様のメッセージです。




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